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第11話
目も合わせずに俯いたままレジを打っていく。
「356円です」
またポソポソっと一言。
なんか綺麗な顔してんのに、地味で勿体ねぇなぁ。って思ったりして。
「なぁ」
なんか知んないけど、声をかけてた。ギョッとした顔をして、俺を見る。
本当にモデルみたいな顔キレーな顔してた。色白で、化粧でもしてんのかってくらい形が整ってて、唇なんか均等にピンクがかってて、口紅でも塗ってるみたいだし。
「あんた新入り? 初めて見た」
かなり雑に話しかける。人もはけた静かな店の中で、俺の声が随分響いた。
彼はポカンとした顔をして、はっ?と尋ね返してきた。
「あ、ごめん気にしないで!俺さぁ、このフリスク買いに結構ここ来てんだけど、あんた見たの初めてだったから」
「はぁ」
「レジめっちゃ時間かかってたじゃん、だから新人かなーと思って」
「あぁ?」
すげー不審者見るみたいな顔してるし。
「まぁ、昨日からバイト始めたばっかだけど」
でも答えてくれる。俺、昨日来てないから知るわけないや。
「あーん、そうなんだ。まぁ頑張って」
500円玉を払ってお釣りを受け取る。その指も細い。
あざっした、と小さい声で言うのを全部聞きもせず、そのまま店を出た。
綺麗な男も居たもんだ、と思うくらいで、印象にも残らなかった。
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