11 / 126

第11話

目も合わせずに俯いたままレジを打っていく。 「356円です」 またポソポソっと一言。 なんか綺麗な顔してんのに、地味で勿体ねぇなぁ。って思ったりして。 「なぁ」 なんか知んないけど、声をかけてた。ギョッとした顔をして、俺を見る。 本当にモデルみたいな顔キレーな顔してた。色白で、化粧でもしてんのかってくらい形が整ってて、唇なんか均等にピンクがかってて、口紅でも塗ってるみたいだし。 「あんた新入り? 初めて見た」 かなり雑に話しかける。人もはけた静かな店の中で、俺の声が随分響いた。 彼はポカンとした顔をして、はっ?と尋ね返してきた。 「あ、ごめん気にしないで!俺さぁ、このフリスク買いに結構ここ来てんだけど、あんた見たの初めてだったから」 「はぁ」 「レジめっちゃ時間かかってたじゃん、だから新人かなーと思って」 「あぁ?」 すげー不審者見るみたいな顔してるし。 「まぁ、昨日からバイト始めたばっかだけど」 でも答えてくれる。俺、昨日来てないから知るわけないや。 「あーん、そうなんだ。まぁ頑張って」 500円玉を払ってお釣りを受け取る。その指も細い。 あざっした、と小さい声で言うのを全部聞きもせず、そのまま店を出た。 綺麗な男も居たもんだ、と思うくらいで、印象にも残らなかった。

ともだちにシェアしよう!