12 / 126

第12話

バーに着くとすでに兄さんがいた。 「なにー、兄さん早くない? どしたの?」 しかもほどよく酔ってるし。 「もー、めっちゃ来るんだよ、ちょーメール来るの」 「メール? あ、あれ、大富豪?」 隣に座って、ビールを注文する。すぐ出て来たのを兄さんのグラスに一方的に乾杯してから飲む。 「そう、大富豪。本当に10分置きとかにくる」 SNSから始まった大富豪の攻撃は、その頃には俺の手を離れて兄さんに移っていた。 「えー、大富豪超マメじゃん、ヤバイね、さすがじゃん」 「マメすぎてメール読む気もしねぇよ」 そうして喋ってる間にもメールが届いてるし。兄さんも兄さんで、嫌がってるわりに不思議とメール受信拒否もしないんだよね。 「ちょっと返信してやればいいのにー」 って言うと、すぐ「じゃあお前やれよ」って言ってくるし。それは勘弁です。 兄さんは兄さんで大変なんだろうけど、俺も俺でいろいろあんのよ。 「ねー兄さんあのさぁ、同じゼミの女のコがさあ、なんかすげぇ彼女みたいに振る舞ってくんの~、どうしたらいいと思う?」 改まって話したことなかったんだよ、そういえば。 兄さんはチラッと俺を見て、食い逃げしたのか?と言った。 「はぁっ? しねーよ!」 「だって女のコ食いまくってんだろ? 何もなきゃそんな風に振舞わないだろ」 「いや、食いまくってるけど、全然タイプじゃないもん!食わない食わない」 それに、その辺に関しては食い尽くしてて、もうだいぶ落ち着いてます。

ともだちにシェアしよう!