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第12話
バーに着くとすでに兄さんがいた。
「なにー、兄さん早くない? どしたの?」
しかもほどよく酔ってるし。
「もー、めっちゃ来るんだよ、ちょーメール来るの」
「メール? あ、あれ、大富豪?」
隣に座って、ビールを注文する。すぐ出て来たのを兄さんのグラスに一方的に乾杯してから飲む。
「そう、大富豪。本当に10分置きとかにくる」
SNSから始まった大富豪の攻撃は、その頃には俺の手を離れて兄さんに移っていた。
「えー、大富豪超マメじゃん、ヤバイね、さすがじゃん」
「マメすぎてメール読む気もしねぇよ」
そうして喋ってる間にもメールが届いてるし。兄さんも兄さんで、嫌がってるわりに不思議とメール受信拒否もしないんだよね。
「ちょっと返信してやればいいのにー」
って言うと、すぐ「じゃあお前やれよ」って言ってくるし。それは勘弁です。
兄さんは兄さんで大変なんだろうけど、俺も俺でいろいろあんのよ。
「ねー兄さんあのさぁ、同じゼミの女のコがさあ、なんかすげぇ彼女みたいに振る舞ってくんの~、どうしたらいいと思う?」
改まって話したことなかったんだよ、そういえば。
兄さんはチラッと俺を見て、食い逃げしたのか?と言った。
「はぁっ? しねーよ!」
「だって女のコ食いまくってんだろ? 何もなきゃそんな風に振舞わないだろ」
「いや、食いまくってるけど、全然タイプじゃないもん!食わない食わない」
それに、その辺に関しては食い尽くしてて、もうだいぶ落ち着いてます。
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