22 / 126

第22話

「来週の火曜ね? じゃあよろしく」 表情は涼しいのに、声は本当に楽しそう。それがちょっと薄ら寒いっていうか。別にこの子のこと嫌いじゃないんだけど、なんでだろうなぁ。 そのまま講義が始まってうやむやになってしまって、無理矢理気を取り直すしかなかった。 講義後、ざわついた室内の空気に紛れて、隣の席の彼女に目もくれず、そのまま廊下へ出た。 足早に立ち去るに限る。外に出ちゃえばもう探すこともできないだろ。 どうしてもそのまま絡まれるのが嫌で、サッといなくなっちゃうに限る。 俺だってさ、わかるよ、そうやって親しくしてくれてるところから、彼女が出来たりすることくらいさ。 兄さんが言ってた通り、軽い気持ちで始めるのももちろんいいと思う。 けどねぇ、なんか違う。そもそも彼女じゃない気がするの、そういう、付き合うとかどうとかいう相手じゃない気がする。ただの友達って感じでさ。 いろいろ思いながら歩く途中、前から来た二人組の男が、親しげに手を振って来た。 「……ん?」 誰だ? ちょっと考えてやっと思い出した。 「久しぶりー、この間の変な奴!」 話しかけられて確信した。 「あー!スノボサークルの奴!だっけ?」 ものすごいキス魔がいるって話してた奴らだ!

ともだちにシェアしよう!