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第27話

「なんかさぁ、ちょっとそいつのことが気になっちゃって。なんつうの、なんか構いたくなるっていうか」 「構いたくなる?」 「うん」 なんか、小学生男子が好きな女の子に構いたくなる感覚に似てるかも。今思えばね。 この間言ってた女の子かと聞かれたけど、全力で首を横に振る。 「別の女の子か」 「違う、男男! でも超美人」 「男? へぇ。タイプだったりして」 「タイプ…いや、タイプ…っていうのとは違うんだけど」 そもそも男だし。 「でもさぁ、超美人とか言ってる時点でもうなんか…」 兄さんが語尾を濁したのを察してハッとする。 「違う!違うから!ホントそういうんじゃなくて」 全力で否定するけど、兄さんはビールを一飲みして不思議そうな顔をしただけ。 「大体にして、お前の初体験誰だよ、俺だろ?」 「うっ」 「男に美人とか言う以前に、もうその時点でいろいろグレーゾーンだぞ?」 「いや、でも」 「女の子ばっか食ってるくせに、結果的に誰とも付き合ってないっつうのも怪しいし」 「それはぁ」 客観的にガンガン言われると余計に混乱してくる。 あれ、俺ソッチの人だっけ? いや、そんなわけ… 頭を抱えると、兄さんが背中を叩いてきた。 「まーどっちでもいいじゃん、好きに悩めよ若者よ」 「うー」 悩んでますよバッチリ。相談相手としては失敗だったかもと思いながら、俺もビールを煽った。

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