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第33話

後から聞いた話によると、スケートサークルのやつらは、スノボサークルにキス魔がいるのは聞いていたけど、誰がそれに該当するのかまでは知らなかったんだそうだ。 「スノボサークルったって、学内にもう2、3個あるしさぁ、どこに入ってるかも知らなかったから」 「ごめんな! 男にファーストキス奪われたんじゃないか?」 「いや、ファーストキスではないけど」 そこはきっちり訂正した上で、改めて話を戻す。 「え、あんな感じで唇奪いまくってんのあいつ?マジ?」 「俺らも初めて見たからなんとも言えないけど、あんな感じなんじゃない? 慣れてたもんな」 「慣れてたっていうか、酔い回ってる感じだったし」 「すげぇな」 クールなところしか知らないから、あんな大胆に唇泥棒する奴だとは思わなかった。 「人は見かけによらないもんだ」 なんて他人事のように言いながら、俺はその件について人のことをバカに出来ない、ある問題に直面してしまっていた。 この2人には決して言えない、とある問題。 「なー。それであのビジュアルじゃん。絶対何人も女落としてんぜアレ」 やっぱりあいつがカッコいいというのはみんな思ってたことらしい。俺の目に狂いはなかった。って、そこじゃない。

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