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第41話
マジか、あんなところでよくやるわ。
校舎と校舎の間のちょっと拓けた場所だから、昼間だったら人通りも多くあるところなのに。
とか思いながら、出歯亀根性でついつい見ちゃう。
人影まばらでよかったね。
でもなんだかいびつな感じがしたのは、片方が嫌がってるように見えたからだった。
暴れるわけじゃないけど、離れようとしてるっていうか、手篭めにされるの嫌がってるみたいな感じっていうか。
(痴話喧嘩かな?)
我ながら鳥目のくせによく見えるもんだ。音としてしか認識できないけど、話し声みたいなのも聞こえる。
喧嘩ならあんなところでごちゃごちゃやってるのもわかるわ。
見るのも見飽きて、店に向かうように歩き出す。
一歩踏み出した瞬間だった。
「先生っ」
はっきり聞こえた。誰の声で誰を呼んでいたのかわかるほどに。
誰と認識したせいか、さっきまでぼんやりとしか見えなかった人影が振り返りざまにハッキリと見えた。
(え、なんで?)
嫌がってるのは、目下俺の気持ちを弄んでる例のキス魔。
彼に迫っているのは、いつか店で見たロマンスグレーの先生。
は?なに?意味わかんねぇ。
飛び込んで来た情報が頭の中で整理できなくて、その場に立ち尽くしてしまう。
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