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第44話
「まー、悩まなくても、誰でもそういう経験の1つや2つあるとは思うけどな。その女の子だって、半年も経ったら別の男と付き合ってるかもしれないし。女はそういう切替えマジで早いからな」
「うん……」
「恋愛って片方が想ってても成立しないから。その女の子の一方通行の片思いだった。今回はそうだったって話でさ。よくある話だ。悪いことじゃねぇよ」
「……」
話を聞いてもらうと、贖罪みたいな気持ちになる。
「恋愛かどうかは別として、お前は男の方に一方通行みたいにも見えるけどな」
自分の身の置かれている状況を一言で表すと、兄さんの言う通り、まさにそれなんだ。
先のことなんて何もわからないけど、俺が彼女ではなくて、彼のことが気になっていることは変えられない事実だし。
「仮にさ、仮にだぞ」
少しの間の後、兄さんは空いたグラスと新しいビールを交換しながら言った。
「仮に、お前が男と付き合っても、別に俺は気持ち悪いとも思わないし、この関係は変わらないと思う」
「えっ?」
「好きなら好きで堂々としてたらいい」
「兄さん……」
新しいビールに口をつけながら、一口あおる。
「でも同性に手を出すって、ある意味不倫とか浮気とかよりリスク高いからな。心から祝福してくれる奴なんてまずいないと思え」
「……うん」
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