45 / 126

第45話

仮に、兄さんがいうように、俺が彼と付き合ったとしたら。 確かに普通の男女のカップルとは違って、いろいろ気を使わなきゃならないと思うし、それに対して劣等感みたいなものも感じたりすることもあると思う。 (付き合ったらって) そもそもそれって、現実的なのかな。男同士で付き合うって。 あの時見たのが本当に痴話喧嘩だったとしたら、あの2人付き合ってるんだろうから、俺と付き合うわけもないし。そもそも向こうが俺のこと好きじゃなそうだし。 どれもこれも妄想の域を出ないけど、俺にそんな覚悟出来るのかな。女の子とも付き合ったことないのにさ。 とはいえ、彼を想ってるってことを自覚した今、大雑把ながら自分の方向性も定まった気がする。 「でもさ、まずは女と付き合った方が無難じゃねぇか? 男より女と恋愛する方が圧倒的に多いわけだし。女の子に連絡先聞きまくってんだろ?」 軽く笑いながら言う兄さんの声も頭に入らず、ぐーっとビールをあおる。 間違った道かもしれないけど、俺は彼のことを想い続けることにしてみる。やれるだけやって、ダメだったら一方通行を引き返すことにするから。 恋愛自体が初心者だから、本当にそれでいいのかわからないけど、だからって自分に嘘をついて違う人と付き合うなんて考えられない。 「うーん……わかった」 声に出してみると、意外と決意表明したみたいにはっきりしてた。 兄さんはチラッと俺を見て、後はこの話題から外れた。

ともだちにシェアしよう!