47 / 126

第47話

「スノボサークルのやつに聞けばすぐわかるけど、なんか用? キスの借り返すの? 先生に仕返しされるぞ」 「教えてもいいけど、仕返しはやめといたほうがいいぞ、あいつのバックには先生がいるから」 (先生って) 真っ先に思い浮かんだのは、この間見てしまった痴話喧嘩。その後に、カフェで見た渋い大人って感じのおじさんの姿。 先生ってあの先生かな。思い浮かんだだけで確信もない。 「先生って、ロマンスグレーな感じの?」 まとめて返すと、すぐに「ロマンスグレーってw」「ロマンスグレー笑」と返信が来た。 「そうだよ、ロマンスグレーの。何で知ったんだよ」 「よく知ってんじゃん、書道学科の外部講師らしいよ。書道中心の出版社の社員みたいで、編集長かなんかみたいに聞いたな。結構やり手らしい」 書道中心の出版社の編集長。また随分マニアックなジャンルだな。 「あいつ、書道業界じゃ有名な若手作家らしくてさ、家も有名な書道教室らしい」 「あのキス魔、若手書道家なんだって。出版業界からも目を付けられてるんだと。だから超親しげ。ヤバいみたい」 全然知らない彼の素顔が少しずつ見えてくる。青田買いみたいなことだろうか。 (じゃあ先生とか言ってたけど) 厳密には先生ではないわけだ。

ともだちにシェアしよう!