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第47話
「スノボサークルのやつに聞けばすぐわかるけど、なんか用? キスの借り返すの? 先生に仕返しされるぞ」
「教えてもいいけど、仕返しはやめといたほうがいいぞ、あいつのバックには先生がいるから」
(先生って)
真っ先に思い浮かんだのは、この間見てしまった痴話喧嘩。その後に、カフェで見た渋い大人って感じのおじさんの姿。
先生ってあの先生かな。思い浮かんだだけで確信もない。
「先生って、ロマンスグレーな感じの?」
まとめて返すと、すぐに「ロマンスグレーってw」「ロマンスグレー笑」と返信が来た。
「そうだよ、ロマンスグレーの。何で知ったんだよ」
「よく知ってんじゃん、書道学科の外部講師らしいよ。書道中心の出版社の社員みたいで、編集長かなんかみたいに聞いたな。結構やり手らしい」
書道中心の出版社の編集長。また随分マニアックなジャンルだな。
「あいつ、書道業界じゃ有名な若手作家らしくてさ、家も有名な書道教室らしい」
「あのキス魔、若手書道家なんだって。出版業界からも目を付けられてるんだと。だから超親しげ。ヤバいみたい」
全然知らない彼の素顔が少しずつ見えてくる。青田買いみたいなことだろうか。
(じゃあ先生とか言ってたけど)
厳密には先生ではないわけだ。
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