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第49話

兄さんと例の大富豪程じゃないけど、俺と彼の関係も、まぁまぁの身分差みたいなものがあるだろう。 この時点でちょっとくじけそうになったけど、まだ先のことはわからないし! 前向きな間に、出来ることをしておこう。彼のことを調べる。 そんなに将来有望な書道家だってんなら、ネットでも調べたら何か情報あるだろ。 (ちょっとストーカーみたいかな) うん、ほら、あれですよ。偉人について調べるのと同じことですよ。 自分に言い聞かせて、勇んでスマホを撫でてみたけど、そもそも彼の名前すら知らないので調べようもないことに気づいて指が止まった。 (うー、これじゃあ本当に片思いじゃん) 高嶺の花に片思いって感じ。結局俺1人では彼に全然たどり着けないんだ。 深いため息をつく。 決意したのに、結局何にもたどり着けないなんてことないよね? まだ始まったばっかりだし、そんなこと信じたくもないけど。また悲観的になりそうなのを無理矢理抑え込んだ。 兄さんがバカンスに行くって言い出したのも、ちょうどこの頃だった。

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