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第50話
「兄さんマジで行っちゃうの!?」
「あぁ、せっかくだしな。仕事もひと段落したとこだし、ちょうどいいかなと思って」
簡単にバカンス行っちゃいなよなんて言ったりもしてたけど、今貴重な相談相手がいなくなってしまうのは痛い。
「え、いつ!? いつ行くの!?」
「来週」
「すぐじゃん! どのくらい行くの!?」
「1ヶ月。向こうもそのくらいいるんだとよ」
「1ヶ月も!?」
想像以上に長い!
大学の夏休みも似たようなもんだと言ってしまえばそれまでだけど、それにしたってそんな長く面と向かって愚痴もこぼせないのは辛すぎる。
「しばらく飛行機なんて乗ってなかったけど、最近のチケットシステムってすげぇのな。住所とか名前とか知らなくても、招待主が金払って保証人になれば、スマホを電子チケット代わりに招待した奴を乗せることが出来るんだとよ。さすが富豪だよなぁ」
のんきにスマホを眺めてる兄さんの刺青だらけの腕にすがりつく。
「ちょー淋しいー!早く帰ってきてねー!」
もうマジ半泣きで。
「なんだよウゼェなぁお前。ちょっと旅行行ってくるだけだっつうのに」
「でもぉ~淋しいんだもぉん」
思い切りすがりついたのを面倒くさそうに振り払われる。
ひと月も会えないなんて、どこにはけ口を見つけたらいいのか……。
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