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第52話

結局、あれからまたラブホに寝かされて、1人で朝を迎えた。 メッセージアプリに、兄さんから「加減して飲めバカ」と一言だけ入っていた。所持金多少あってよかった、金払ってさっさと外に出る。 普通に講義があるから、一旦家に帰って荷支度し直す。 バーに行ってワンクッション置いたはずなのに、ずっと彼のことを考えていたせいか、ずっと大学の中にいるような感じがして気持ち悪い。 恋わずらいってこんな感じなんだろうか。胸のあたりがずっとモヤモヤしてる。 「酒でもたれただけだったりして」 呟いてみるとちょっと虚しい。胃をさすりながら歩くと、自然と足がコンビニの方に向いた。 (フリスク残り少なかったんだ) 足が向いたついでに買いに行く。 もしかしたら彼がいるかもしれない。 会いたいの半分、会いたくないの半分。 ババ抜きでラスト2枚、ババを引くか引かないかのドキドキするあの感じに似てる。どっちにしろ二択だし。 会ったら直接連絡先聞けるじゃん、と思う一方で、緊張してしゃべれないかもとも思う。 自動ドアが開いた瞬間に、やる気のない挨拶の声。あっと思った瞬間に目が合ってしまった。 「あ」 お互いに同じタイミングで声を出していた。初めて会ったときと変わりない制服で、変わりない涼しげな顔で、普通に店員をやっていた。

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