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第56話

「うるせぇな、なんだよ連絡先くらいで」 「あ、ごめん、マジ信じられなくて」 「大げさすぎ」 静かに怒られる。 彼は俺のレシートを奪い取り、裏にさらっと連絡先を書いた。 「ありがとうございました~」 店員モードに戻った。これ以上話すことはないとでも言うように。この先は連絡先にとでも言うように。 俺はレシートを握りしめて、ものすごい軽い足取りで店を出た。 殴り書きされた割にはさすが書道家、綺麗で読みやすい字だ。すぐに登録する。そしてメッセージを送る。 「登録完了!ありがとう」 もちろんすぐに返信がくるわけもない。 「よろしくな、と」 声に出しながら文章を打つ。歩きながらは良くないから、立ち止まって。 「俺は教育学部の3年。幼児教育学科で、保育コース。名前は」 つらつらと自分のことを書く。自分のステータスと、趣味や出身校、住んでいるところ、好きなアーティスト、好きな酒の種類、好きな飲み屋。いろいろと履歴書みたいに。 不思議なもんで、言葉が止まらずに出てくる。俺のことを知ってほしいって気持ちが止まらない。 気づけばとんでもなく長い文章になっていた。メッセージアプリらしからぬ様相だった。

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