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第57話
(まぁいいや)
あふれる思いが止まらなくて、そのまま送信した。
迷惑だったかなって思ったのは送ってからだったけど、もう遅い。
まだ何の返信もないメッセージアプリのトーク画面をしげしげと見つめる。これが彼と俺をつなげる唯一の手段なんだと思うと、ちょっとレアで繊細なものみたいに思えてくる。
地面から数センチ浮いてるんじゃないかと思うくらい、足取りは軽やかで心はふわふわしていた。
家に帰っても、兄さんがいないバーに行ってもそれは同じで、ずっと軽やかでふわふわしてて、満員電車で足踏まれたって許せちゃうくらいで。
彼から返信が来たのは、その日の夜中だった。
もう寝ようかなと思っていたところで、とろとろと気持ちよくなっていたあたり。
着信音で軽く目が覚めて、名前を見てすっかり目が覚めた。
「いきなり長い」
たった一言だけ。すぐに返信する。
「ごめん、つい」
動くスタンプにも謝らせると、すぐに返信が来た。
「長すぎて読むのダルい」
「じゃあ短く切るからもっかい送る」
「送らなくていい、読んだから」
マジか、読んでくれたのか!
憧れのアーティストにファンレター読まれたみたいな気分。
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