59 / 126

第59話

うーん。そうか。 もしかしたら、ずっとそうやって人からちょっと違う目で見られてきたのかもしれない。 (しまいにキス魔だし) それはどうでもいいんだけど、俺の彼に対する印象は、そっちの方が強いわけで。 「俺は書道のこと全然わかんないから、どっちでもいいよ。関係ないし、嫌ならその辺のことは何も聞かないし」 ホント適当だよなーと思いながら返信する。だって本当に書道のことなんにも知らないもん。 彼からは返信がこなくなってしまった。呆れられたのか寝落ちしたのか。 興奮していたものの布団で体も温まったせいでだんだんウトウトしてきて、先生のことを聞く前に、スマホを握ったまま寝てしまった。 すっかり夢の中に落ちた数分後、彼から返信があったことも知らずに。 「よかったら、1コマ終わりに、書道学科の教授棟に来て」 目が覚めて一発目に見た通知が彼からで、瞬時に100mくらい走れそうなくらいテンションがあがった。 たまたま早く目が覚めたからよかった。1コマの授業のときにしか乗らないバスに乗って、言われていた時間よりも随分早く大学の正門をくぐっていた。 「ねえ!あのさ、書道学科の教授棟ってどこ!?」

ともだちにシェアしよう!