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第60話
文学部の学舎に向かって歩いていた奴を適当に捕まえて聞く。文学部の学舎はわかるんだ、教育学部の隣だから。でも細かい学科の場所や、まして教授棟なんて知らない。
ちょっとびっくりした顔をして、学舎の一番東側だと教えてくれた。
「ありがと!」
適当に手を振りながら、一目散に走った。中高とハンドボールで鍛えた脚力はまだ衰えていないか。ギリギリ人にぶつからないように切り抜けて走る。
文学部に来るのは初めてだった。学部が違うと雰囲気もちょっと違う。教育学部に比べて少し涼しいというか真面目というか、なんかちょっと取っつきにくい空気感だなって感じがした。
すれ違う人すれ違う人、他人と群れるって感じじゃない。
(なんかあいつの雰囲気そのままって感じ)
わりとみんなで仲良くわちゃわちゃしてる教育学部まはちょっと違う。
空気を新鮮に感じながら、勢いで教授棟の入り口のドアにたどり着いた。建物の一番奥にあって、よく言えば厳か、悪く言えば湿っぽい雰囲気。
(ここの雰囲気は教育学部と同じか)
敷居が高い感じはどこも同じみたい。
それにしても人っ子1人通らない。物音1つしない。流石にちょっと緊張する。完全アウェーでぼんやり立ち尽くしていると、救世主みたいに彼が現れた。
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