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第66話

ちょっと躓きそうになりながら入った部屋の中は、四畳半より少し広いくらいの広さで、開けた瞬間にむせ返るような墨の匂いがした。廊下と同じように薄茶色い色の本が壁像にぎっしりと並んで圧迫感がすごい。そこに混じって、なんて書いてるかわからないけど迫力はすごい書道作品が、いくつも掛け軸に掛けられてる。 一番奥に、椅子に腰かけたロマンスグレーがいた。 「えっ」 いるのかもと思ってはいたけど、実際目の前にするとびっくりして、変な声が出た。 ガチで痴話喧嘩の仲裁かよって気持ちと、彼に腕を掴まれたってドキドキと、ロマンスグレー近くで見ると渋くてカッコいいなって驚きと、なんかいろいろ混ざり合って何とも言えない感情のまま、彼の隣に立つ。 「こいつです、今俺が付き合ってるの」 しまいに突然そんなこと言うもんだから、真面目に目が飛び出るんじゃないかと思うくらいの顔で彼を見てしまった。 「はあ!?」 「2ヵ月くらい前から付き合ってます。すいません、報告遅くなって」 「……驚いたな」 ロマンスグレーまで驚いた顔してる。なんだかよくわかんないけど、俺いつからこいつと付き合ってましたっけ?

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