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第68話

「君は彼のどこを好きになったんだ?」 面接はまだ続く。 「彼は酔うとキス魔になるなんだが、まさかそこで唇奪われてからっていうわけじゃないよな?」 そこは完全に図星なんですけど! 「僕は、書家としての彼の才能と、穏やかな人柄、そしてその端麗な容姿をずっとそばで見続けてきたんだ。だから君を否定するわけじゃないけれど、彼のことは君よりも見つめ続けていた自信がある」 「あー、や、あのー」 圧倒されてうまいことも言えないでいると、彼は俺と先生の間に入って、あまり攻めないでくださいとツンとした態度で言う。 「残念ですけど、俺の方から好きになったんです。俺が連絡先を聞いて、俺から連絡しました」 嘘も方便とはまさにこのことだろう。でもここはうんうんと頷いておくしかない。 「そ、そうです、こいつから連絡先聞かれて、教えました」 「君から?」 先生はまた驚いた顔をしていた。 「男なんか興味無いのに、無理やり付き合ってもらったような感じです。でも、今はこいつも俺のことを好きでいてくれてます」 「はいっ」 もうどうにでもなってしまえ。事情はあとで聞こう。

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