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第70話
「彼が俺のことを好きでいてくれる限りは、ちゃんと彼と向き合って、付き合っていきたいと思っています。学生だし、男同士だし、いろいろあると思うけど、彼と付き合っていきたいんです」
先生の目をじっと見ながら話す。唇がへの字に曲がった。顎に寄った皺が、悔しさをにじませてる。
ここで畳みかければ、彼の望む方向に転がせそうな気がする。こっちもだんだんノッてきていた。
「ちょっと来て」
さっきやられたみたいに、今度は彼の腕をつかんで引き寄せる。
驚いた顔をしたままの彼は、俺の顔をじっと見つめた。
あぁやべぇ、ホントに美人だなコイツ。先生が惚れるのもわかるわ。
そのまま俺の腕の中に収めた。抱きしめるとホントに細い。男を抱きしめたのなんか兄さんとホテル行ったとき以来だけど、兄さんより細くていい匂いがした。カフェで会ったときの柑橘っぽい香り。
「ごめん」
本当に小さい声で先に謝った。彼も無声音状態で「はっ?」と尋ね返してくる。
キス魔だってわかってんだったら、それを利用しない手はない。
軽く顎を持ち上げると、そのまま軽く唇を重ねた。
「んっ!」
柔らかい唇越しに抵抗を感じる。けど、構わずふさぎ続ける。
彼が俺の胸を軽く押したのを機に離れた。
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