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第73話
「……初めは、普通に外部講師で来てた編集の人って感じだったんだ。もともとその出版社とはうちが知り合いだったから、そこの出版社の人だなってくらいで」
うちは書道教室やってて、と一つ一つ確認するように、ゆっくりと話し始める。
「その縁もあって、わりとすぐ仲良くなったんだ。いい話相手っていうか。やっぱそっちの出版社の人だから、作品に対するアドバイスも的確なわけ。で、俺もいろいろと話聞いてもらったりし、だんだん親しくなって、たまに飲みに行ったりとかしてたの」
「……うん」
「そしたら、だんだん親しげになってきたっていうか、なんかスキンシップが増えてきたって言うか、やたら近いなって感じになってきて」
「うぇー、マジで?」
「マジ。一人で作業してたら気が付いたら後ろにいてびっくりとかしょっちゅうだったし、何気なく手握られたりとか、ひどいときなんか後ろからハグされたりして」
「わー、セクハラじゃん……。それは、いつから?」
「一年くらい前かな」
「一年も前っ?」
最近の話かと思ってたのに。ってことは、いつか見たのは痴話喧嘩じゃなくてセクハラの一環だったってことか?
「ずっとセクハラに耐えてたってわけ?」
「うん、まぁ。たまに股間触られたりとかもしたけど、我慢できたから」
しまいに、たまに電車で痴漢にもあってたし、なんてサラッと言ってのける。
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