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第74話

「それで、何カ月か前、言われたの。付き合ってほしいってさ」 さすがにドキッとした。 「いや、無理じゃん、普通に考えて。俺全然そんな目で見たことないし、先生のこと。大体、男と付き合うなんて考えたこともないし」 「……」 心臓を動かしたドキッとした衝動が、ズキッに変わる。 「何回か遠巻きに無理だって伝えたつもりだったんだけど、なんかうまく伝わらなくてさ。それで、ちょっと前にハッキリ無理だって言ったんだ。そしたら、誰かほかに付き合ってる奴がいるのか?それなら諦めるって」 「それで、俺を呼んだってこと?」 「うん、まぁ」 彼はゆっくり頷いた。まぁキスされるとは思わなかったけど、と釘を刺して。 「誰かと付き合ってるってことにしたら離れてもらえるかなと思って。女の子でもよかったんだけど、男が男に迫られるって知ったら引くじゃん。何か話がこじれて、女の子に危害加えられたらヤバいし」 「男ならいいやって?」 「いや、危害加えられるのがいいっていうんじゃなくて、男が男に迫られてるんだから、男と付き合ってるってことにしちゃえば話が早いなって思ったのもあって」 「なるほどね」 まぁ辻褄は合うか。

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