「それはそれでいいんだけど、前もって言っといてもらいたかったかなぁ、概要くらいは」 「それは悪かった。もうさっさとケリつけたかったんだ。ごめんな」 でも、わざわざ俺が抜擢された理由がわからない。心臓は相変わらずズキズキしたまま。 「なんで俺だったの？」 じっと見つめる。納得できる理由が欲しい。例えダシに使われてたとしても。 「それは」 彼は意外とすんなりその理由を話した。 「居酒屋のキスのこと、あんまり悪く言ってなかったから」 「キス？」 「うん。怒りもしなかったじゃん。だから、このこともさらっと受け止めてくれるんじゃないかなと思って」 コンビニで、キスは無礼講だったから別に気にしないって言ったときのことを思いだした。あの時びっくりした顔をしたのが、今につながってるってわけか。 「忘れてくれっていうのは都合よすぎるけど、あんただったら受け流してくれそうな気がしたんだよ。あんまり深刻に考えなそうっていうか。あ！　でもな」 馬鹿にしてるとかそういうんじゃないから！と慌てて手を振って否定する仕草が可愛い。 …………あぁ、それならもう。 自分の中のタイミングというか封切りというか、箍が外れたのを感じる。 これを逃したら、もう彼を想う言葉を伝えることはできないような気がした。どうせ叶わないんだから、言うだけいいだろ。