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第76話

「あのさ」 身を乗り出す。コーヒーカップの横に肘をついて、自分の手を強く握りしめた。 彼は微動だにせず、俺を見つめたまま。 「気持ち悪いこと言うかもしれないけど」 怪訝そうな顔で軽く首をかしげた。 一回生唾を飲み込んで、息を吐いて、はっきり言った。 「俺、ガチで好きなんだ、お前のこと」 彼の目がまん丸くなる。 「はっ?」 完全に、予想してなかったって顔をしてる。そりゃそうか。 「俺、冗談でも何でもなく、お前のことが好き」 「え? 何、ちょっと待って……」 「さっきのアレ、演技だけど半分本当」 「は……」 彼の色白の綺麗な顔が赤くなっていく。 俺もつられて顔が熱くなる。 「え、あの」 「……」 「嘘だろ? ホントに冗談じゃなくて?」 「冗談じゃない」 ぴしゃっとハッキリ言いきっちゃうと、さらにもうどうにでもなってしまえと思ってしまった。 「初めてコンビニで会ったの覚えて……ないんだっけ。俺はちゃんと覚えてるんだよ。やる気ねぇバイトだなぁって思ったけど、ホントに綺麗だなぁって思ってさ。そのあとここで会って、それから飲み会でまた会って、会うたんびにドキドキしてた」 「……」 「俺さ、女の子にすげぇ言い寄られてたの、このところさ。でも、全然付き合う気にならなくて。どうしてもお前が気になってしょうがなかったの。自分に嘘ついて誰かと付き合うなんて絶対出来ないし、だから断ったんだ」 「……マジかよ」

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