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第80話
なんとなく気持ちはわかる。
「でも結果的に、男のお前のこと利用してる時点で、そういう趣味ないだとか屈辱的だとかそういう問題じゃないよな」
自分の中を整理するように言う。カップをソーサーの上において、まっすぐ俺を見る。
「お前の言う通りかもしれない」
彼は静かに微笑えみかけてきた。
「付き合ってみる、お前と」
「……え?」
「ダメだったら、友達ってことで、どう?」
「えっ、え?」
今付き合うっつった?
信じられなくて顎が外れそうなくらい口を開いた。
「まひで?」
「うん、マジで。口閉じろよ汚ねぇな」
「ふん」
口を閉じてもぽかんとしてる。
彼はまたコーヒーをすすって、ほつれた髪を耳にかけた。一連の動きがしなやかで、目の前で日舞でも見てる気分だった。書道家だからなぁ。
なんてそんなこと考えてる場合じゃないわ。
「え、あの、じゃあ、俺の彼女ってことでいいの?」
もじもじしながら尋ねると、なぜかびっくりした顔をされた。
「え、お前が彼女じゃねぇの?」
「え?」
「俺女役?」
「だろ、明らかに女の役回りだったじゃん今までの経緯」
「えぇー、マジかぁ……」
男に言い寄られたり痴漢されたりしてるって自分から言ってて今更ですか?
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