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第81話

「うん、ま、とりあえず、そういうことで」 お茶を濁そうとするところに、あえて畳み掛けた。 「ホントに、いいの? 後悔しない?」 長い睫毛が、何度か瞬く。 「いいよ? なんで?」 あまりにもあっけらかんとしてるから、こっちがおかしいこと言ってる気分になる。 「だって、男に言い寄られて嫌だったのに、男と付き合うのっておかしくない?」 まぁ付き合ってって言っておいてそんなこと言う俺もおかしいんだけど、いざとなると不安になっちゃって。彼も彼で、おかしいかもしれないけど、と言葉を濁す。 「でも、お前、ホントに優しそうだったから」 コーヒーをすする合間に、彼は呟いた。 「俺がされて嫌だったことは、しないと思うから」 それって、俺がすごく信頼されてるってことでいいのかな? そういうことだよね? 「しねぇ! お前が嫌がることは絶対しない!」 勢いあまって立ち上がったのを、犬を叱るみたいに座れっ!って言われた。 「しないよ。うん。それは信じて」 せめてもの誠意を表そうと、背筋を伸ばして座る。彼の細い指が、また髪をかきあげた。 「わかってる。だから、よろしくって言った」 改めて言われると、心臓辺りから花が咲くみたいなじわじわした熱を感じた。

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