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第82話

コンビニの一目惚れから始まって、実ることがないと思われた恋が、今形になった。 うわ、俺、彼女できちゃった。女じゃないけど。 「うわぁぁぁめっちゃ嬉しい! マジで? マジでいいのっ?」 頭がおかしくなったんじゃないかと思うくらいフワフワしてる。ちょっと浮いてない?俺大丈夫? 「いいってば。しつこいなぁ」 眉間に皺寄せた呆れ顔も可愛い! 自慢したい!すげぇ自慢したい!こんな美人な彼女出来たなんてマジでヤバいでしょこれ! 「でも、やっぱ無理だなってなったら友達に降格だからな」 「大丈夫!絶対幸せにするから!」 「どっから来んだよその自信」 テンションの違いもかなりなもんだけど、欲しいものを手に入れて俺には怖いものはない。 「ま、とりあえず、お互い次があるんだし、後でな」 彼の視線の先にあるのは、店のレトロポップな壁掛け時計。あと15分で2コマが始まる。 「え、もうこんな時間?」 たった1時間半くらいが、かなり濃密だったわけだ。1時間半のうちにロマンスグレーに勝って彼女を手に入れたなんて、RPGじゃねぇんだから。 「奢るよ。今のお礼」 立ち上がった彼につられて席を立つけど、彼女に奢られるなんてなんか悪い。 「代わりに今度奢ってもらうから」 店を出て、それぞれの学舎に向かう帰路で、彼は耳打ちするのだった。 「デートしたときにな」

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