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第84話
(生殺しだ……)
考えるだけでも体が疼いてくる。ダメだと言われたわけじゃないのに、暗示にかかった気分。ダメだと言われれば、余計に触りたくなる。
(どんな体なんだろう)
すごく細いのはわかっている。講師室で抱きしめた時のこと、忘れられない感触だもん。ちっちゃくて、骨ばってて、その指そのままに細い体で。
(いい匂いがして)
少しムラッとしてきた。自然と手が股間にのびる。
利き手の右手がスウェット越しのパンツの中に忍び込んで、直に下半身を握った。ちょっと硬くなり始めてる。
彼の透き通るみたいな白い肌、ほつれた黒髪、唇の感触。自分が知る限りの彼の情報と妄想の中の好みが混ざり合って、脳裏にとてつもなく妖艶な姿の彼が出来上がる。
頭の中の彼はあられもなく喘いで、右手も自然と動き出した。
(彼に触りたい)
少しずつ早く丁寧に手を動かす。頭の中にしかいない彼は、俺にだけ痴態を晒して恥ずかしげもなく鳴いている。
男をオカズにしたことなんかないのに。自分の中の変化を感じながらも、手の動きは止められない。
先端の潤みを感じたのとほぼ同時に、背中を丸めて手の中に熱を吐き出した。100mダッシュしたくらい息が上がってた上に、吐き出すのがいつもより相当早くて、ちょっと落ち込んだ。
触れることがあったとしたら、どうなっちゃうんだろう俺。
(触れるかなぁ、いつか)
付き合ってるとはいえ、友達以上恋人未満の今思うことじゃないのは重々承知ですけど。
適当にティッシュで拭って捨てると、そのまま眠ってしまった。
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