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第87話
「俺はあと終わり」
「午前だけ? マジかよ」
「うん、じゃあ明日は?」
明日は午前中だけ、しかも花金。日曜日までゆっくりできる俺にとっての最高の日。喜びたっぷりに伝えると、じゃあ予定ある?と聞かれた。
「予定?」
日曜日はバイトってくらいで、だらだらすごそうかなって思ってたくらいで何もない。
「ないけど?」
「じゃあ付き合って。知り合いの書展に顔出しに行こうと思ってたとこだったから」
「書展?」
書展ってなんだと思いながら、すぐにそれってデートじゃん!と思い直した。
「え、それってデートってことでいい?」
「う……んー」
ちょっと耳が赤い。もしかして照れてる?
「改めて聞かなくても良くない?」
やっぱり照れてた。細い指で口元を隠す。今思えば無粋なこと聞いちゃったな。
こっちまで照れてきて、ちょっと恥ずかしい。
「あ、じゃあ、うん」
2人して手が止まっちゃった。気を取り直して、でもちゃんと言っておきたい。
「明日、デート、しよ」
彼の顔を見ながら改めて言うと、その耳はますます赤くなってしまった。
「なんでだろな、なんか照れる」
少しの間の後、再びロコモコ丼にスプーンを突っ込みながら、彼は呟いた。
「それはほら、俺だってそうだし」
俺なんかこいつのことマジで好きだから、照れるどころの話じゃない。
付き合ってるとはいうものの、改まってデートだどうだって言うと恥ずかしい。
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