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第90話

「うわぁ、さすがに恥ずかしいわ」 露骨に嫌そうな顔をする。けど、これから引き返して着替えようとも思わないし。 「初デートでペアルックってことで、まぁ今日は」 適当にごまかして、先に進むように促した。 文化会館は駅から歩いて20分くらいのところにある。改まって歩いたことはないけど、記念すべき彼との初デートの道と思うと感慨もひとしおと言いますか何と言いますか。 「男同士だからしょうがないんだけど、あれだよな、服装に色気ないよなお互い」 「それな」 うっすら思っていたことを彼が口にする。ふわふわした可愛い服装の女の子と一緒に歩いているならまだしも、普通に男と歩いてるわけだから。 でも俺、普通に女の子と歩いてるよりも、今の方が緊張してるけどね。ちゃんと俺が車道側を歩いてますよ。 改まって言うのもアレだけど、やっぱり俺より背が低い。俺背高い方だから、余計そう感じちゃうかもしれない。兄さんと同じくらいかもしれないけど、ほっそりしてるせいか兄さんより小さくて弱く感じる。触れたい、守りたい気持ちが沸き上がる。 「なぁ」 言いながら、ポケットの中にしまっていた手をそっと伸ばす。彼は俺のその手を見て、一瞬立ち止まった。 「なに……?」 本当に不思議そうな顔をしている。そりゃそっか、俺もいきなり手出したからな。 「手、つながない?」 ちゃんと言葉すると、びっくりしたのか目をまん丸くして少し上目遣いで俺の顔を見てくる。ヤバい。超可愛い。

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