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第113話

途端、彼が無理矢理振り返る。 「入りそうって……」 「これ」 指を引き抜き、ゆるゆるになってる彼の穴に俺のを擦り付ける。 俺のもだいぶ熱いけど、彼の穴も強引に解したせいでだいぶ熱い。 「ちょっと、ちょっと待って」 彼は少し慌てた感じで、体を起こした。俺もつられて起きる。 「心の準備が……まだ」 ぽそぽそと呟く。自分の体を抱きしめるみたいに、二の腕を掴んで、そのままあぐらをかいてしまった。長い睫毛が伏せられて震えてる。 そんな彼の姿が、童貞卒業したときの緊張感と重なった。 (あのとき兄さん抱きしめてくれたっけなー) なんてしみじみ思い出すほど昔の話でもないのに思い返す。 あのとき兄さんがどんな気持ちで俺を抱きしめてくれたのかはわからないけど、俺は今、戸惑ってる大好きな人を目の前に、とにかく安心させたい気持ちに駆られていた。 「おいで」 手を広げる。縮こまったままの彼は、少し躊躇った表情をして、意を決したみたいに俺の胸におさまってきた。 「もうちょいリラックスしてよ」 全身でかしこまってるのを感じて、ちょっと笑っちゃう。 「無理だって……」 けど、腕の中では抵抗もしてこない。包むみたいに抱きしめて、彼の肩に顎を預けた。

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