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第115話
彼は本当に恐る恐るという感じで、ゆっくりと俺の脇の下から背中に腕を伸ばしてきた。
肩甲骨辺りを優しく撫でられる。
「……ありがと」
本当にぽつっと呟いた。
「めっちゃ恥ずかしいけど、そんなに想ってくれてありがとう」
「あっ、うん……」
「ちょっと下手なんだ俺。嬉しいのにちゃんと人に伝えられなくて、いっつも損してた」
「そう、なんだ」
「うん、嬉しいことも、嫌なことも、ずっと我慢してきて、言えなかった」
「……」
小さい体が、余計に俺にひっついてくる。
「なんか迷惑なんじゃないかなって思っちゃって」
思慮深いって言えばいいのかもしれないけど、たしかに遠慮がちっていうか、ちょっと人付き合いが苦手なのかなとは感じてた。だって痴漢されても我慢してるし、先生に言い寄られてもうまく拒絶も出来なかったわけだし。男なんだから、普通だったらブチ切れても殴りかかってもいいとこだと思うのに。
「好きだよ、お前のこと」
そんな彼からハッキリと言われると、心臓が爆発したみたいに大きく跳ねた。
「迷惑じゃないみたいだからちゃんと言うね、お前が好きだよ」
より一層強く抱きしめられて、心臓の動きが直接彼に伝わっちゃったんじゃないかと思った。
「これからもよろしく」
少し体を離すと、俺の顔を見て静かにキスをしてきた。
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