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一人と一羽の居候を迎え入れた大智は、早くもうんざりとしていた。 理由は山ほどある。 例えば スーパーで安く仕入れた小松菜が無くなっていると思ったら、 「ケンター、お前は本当に旨そうに食うなぁ。可愛いなぁ」 「グワッ」 夏樹が勝手にくれていたり。 シャワーを浴びようと浴室に入ったら、 「ケンター、お水気持ちいいなぁ。水、もっと増やしてやろうかぁ?」 「グワッ」 浴槽に並々と水を張って水浴びをさせていたり。 他にも、ところ構わず糞を落とす、 ひっきりなしに鳴いてうるさい、 羽が舞って部屋が汚れる、 生き物特有の臭いがする、など。 でも、一番の理由は…… 「ケンタ、お前は可愛いなぁ」 「グワッ」 「お、俺の後ろ付いてくる!スゴイ!」 「グッグッ」 「アハハ!お前、俺の事好きなのー?」 「グヮグヮ」 これだ。 夏樹は身を置かせて貰っている立場のくせに、恋人の大智の事はそっちのけで、ひたすらケンタを可愛がる。 目の前で、恋人がケンタという別の男と乳繰り合っている様に感じて、大智は苛立ちを募らせていった。 なんでアヒルなんかに嫉妬しなくちゃいけないんだ、と自分が情けなくなる。 夏樹がバイトに出掛けた午後。 大智は言葉の通じないケンタに向かって怨言を吐いていた。 「おいアヒル。お前が迷子にならなければ、俺は先輩と最高の夏を過ごせたんだぞ、わかるか?」 「グヮグヮ」 「お前がそんなに愛くるしいナリをしているのも悪い。先輩をたぶらかしやがって」 「グワワ……」 「全く……お前に罪は無いが、先輩には反省してもらわないとな」 大智の影がケンタをすっぽりと包んだ。 大きな手が、ゆっくりケージへと伸びていく……。

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