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先輩の優しさのお陰で、今の自分があるのに、先輩の優しさを全力で否定してしまった。 吐いた唾は飲めない。 こうなったら、早くケンタを見つけて、先輩に謝らなくては。 謝って謝って、いかに自分が夏樹の優しさに救われたか、どれ程夏樹を好いているか、しつこいくらいに何度も言うんだ。 格好をつけずに、みっともなく。 「ケ、ケンター……」 「グヮ……」 大智が小さな声で呼び掛けると、暗闇の中にぼんやりと白いものが蠢いた。 近付くと、道の端にケンタが座っていた。 「ケンタ!よかった!早く先輩に知らせないと……」 大智は、ケンタを抱く自分が心から笑っていることに気が付いた。 今、ケンタに抱く感情は嫉妬ではない。 ケンタは、夏樹の優しさに同じく救われた“同志"なのだと感じていた。 「あ!先輩!ケンタ居ましたよ!」 ほっとして泣きそうな顔をした夏樹が走ってくる。 「大智!ありがとう!よかった!」 「ほら、先輩が抱っこしてください。その方がケンタも落ち着きます」 「ああ、ケンタ、ケンタッキー!俺のせいで怖い思いをさせてごめんなぁ」 ケンタのフルネームは“ケンタッキー"だった。 大智はケンタッキーに対して嫉妬していた過去の自分が、ますます恥ずかしくなった。

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