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第3話

暫くは暇潰しになるか…… 窓から見える、綺麗に整えられたイングリッシュガーデンを眺めがら、そんな昨夜の事を思い出し、近くのモスグリーンのガウンを手に取った。 「私が……」 それに気づいた神楽坂がガウンを広げると、俺は無言のままそれに袖を通す。 「それと、いい加減寝る時は何か着て寝てください」 「ほんと、お前煩いな……」 神楽坂が俺に仕えるようになってもうすぐ二年。年齢もそう変わらない所為か最近じゃ口を開けば小言ばかり。それでも基本的には波風立てない真面目な性格だ。 それに世に言う使用人を絵に書いたようなオールバックに撫で付けられた黒髪とスッとした整った顔立ち、全てを黒で統一されたスーツ姿はこいつの真面目さを象徴しているかのようだった。 「それに、ここ……」 ガウンの紐を結びながら神楽坂の視線は鎖骨へと流れ、つられて同じように流した視線の先には、昨夜の知らない男に付けられた跡がくっきりと残っていた。 見られたくなかったわけではない。 でも、見せ付け、その反応を見たかったわけでもない。 心の奥底で否応なしに渦巻く感情…… 「シャワー浴びてくる」 そんな複雑な感情を断ち切るようにそれだけ告げた俺は、伸びてきた神楽坂の手を払い除け、逃げるようにバスルームのドアを開けた。 すげー赤くなってる。 だから跡は付けるなって言ったのに…… バスルームの鏡に映し出された自身を眺めながら悪態を吐く。 そしてそのまま鎖骨へと指を這わせ目を閉じた。 もしも、ここをアイツに触られたら……どんな感じなのだろうか。 ゆっくりと辿る指先がなぞるようにそこを行き来する。 これが自分の指じゃない、アイツ……神楽坂のものだとしたら…… 「……ッ」 一気に熱がそこに集中して鼓動が速くなる。 それを抑えるため、シャワーのレバーを思いっきり回して冷たい水を頭から浴びて落ち着かせた。 俺を心配して口出ししてくる神楽坂が最初はウザくて仕方なかったのに、それでも忠実に真っ直ぐに接してくる姿にいつしか好意を抱くようになってしまった。 そして好きになる度、こんな自分が触れてはいけないという想いが強くなっていった。 好きだからこそ…… 触れてはいけないと。 冷えてく身体と共に、溢れそうになる気持ちを必死に誤魔化し、再び気持ちに蓋をした。

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