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 焦ってやや乱暴を働いてしまったことに気づき、慌てて「すまない」と謝意を述べる。  最近の僕はどうも可怪しい。天宮くんを目の前にして、こんなにも荒く心持を掻き乱されてしまうなんて、どうかしているのだ。 「天宮くんは、僕との遊戯を好いてはいなかったのかい?」  僕は少し天宮くんから距離を取る。またしても天宮くんを怯えさせてしまうような真似事などしたら、それこそ本当に天宮くんは僕から離れてしまうだろう。 「そうではないのです。貴方の心持が僕には理解できない。僕を……(もてあそ)んでいるだけなんじゃないのかと……僕は近頃、自分が単なる淫婦なんじゃないかと思い始めてきたのです」  天宮くんは微かに体を震わせ、着流しの襟元を指先で手繰り寄せる。その姿が身持ちの固い女のような仕草に思えてならない。 「そんな事は断じてない。今もこうして君は恥じらっているではないか。僕はそんな目で君を見たことはないよ」  僕は宥めるように訴えかけた。天宮くんがそんな風に感じていたのなら、僕は本当にすまないと後悔の念が沸々と湧き上がる。こんな風に誰かを慮る事などこれまでになかったのに、天宮くんの苦しげな表情を見ていると、胸の奥が途端に苦しくなってしまう。 「貴方は……どうして僕なんかを抱くのですか? 僕は貴方に好かれていると最初は思ってみたこともあります。でも……鎌頼に関しての事はどうにも納得がいかないのです。鎌頼をけしかけて、僕にあんな事を……」 「それはすまなかったと思っている。だからこうして、君に色々尽くしているではないか。これでも君は僕を許してくれはしないのかい?」  涼しい河原にいるせいなのか、少々湯冷めしてしまっているのだろう。僕の額や背に冷たい汗が流れ落ちていく。 「確かに最初は本当に遊戯を止めてしまいたいとも思いました。でも……今日の貴方を見て僕は少しだけ考えを改めました。本当に淫婦や玩具にしか思っていないのであれば、ここまでしないでしょうし、失意の念に暮れている僕を無理にでも抱くだろうと……」 「そうだとも。君を淫婦とも玩具だとも思っていないよ」 「貴方は……本心はどう思っているのですか?」  僕はそこで一旦、口を噤む。こうして本人から自分に対する心持について聞かれてしまうと、自分の心持について、はたと考え込んでしまう。僕が天宮くんに執着している事は、紛れもない事実ではある。でもその根底には何があるのだろうか――  ふと、一つだけ思い当たる節が浮かび、途端に酷く躊躇の念が込み上げた。

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