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第7話
【遙真side】
金曜日。今日は、仕事終わりに部のメンバーが俺の歓迎会を開いてくれるらしい。
急いで仕事を切り上げて、予約されている居酒屋へと向かった。
店員に案内されて席に着く。
幹事である先輩――俺よりは年下だが――が先に来ていた。
お疲れ様です、と声を掛けて席に着いた。
暫くすると同じ部署の人たちが集まってくる。
その中に戸河内さんがいた。戸河内さんは俺の横に腰掛けて一つ、溜息を吐いた。
「呑み会ほど面倒な事はない」
「はは……ご足労掛けます」
全員集まり、進行役の先輩が話し始めた。
そして、俺にバトンタッチされる。
「えっと、この度途中入社しました、鷹栖遙真です。まさか歓迎会を開いてもらえるなんて思って無くて…あの、ありがとうございます」
部長や課長が固いぞー、なんて言って茶々を入れる。
それに答えながらなんとか挨拶を終えた。
乾杯を終え、各自好きなように話し始める。
「鷹栖は前も営業職だったんだってな」
戸河内さんに声を掛けら、それに「はい」と答えた。
「何故、前の会社を辞めたんだ?」
「あー…お恥ずかしい話なんですが失恋しまして…同じ会社の子だったんで居づらくなってそれで…」
「じゃあ、傷心って訳か」
「はい…でも、それからこの人婚約者と別れたってわざわざ俺に言いに来て…」
「…へぇ?」
戸河内さんに今までの経緯を話した。
戸河内さんは合間合間に相槌を打ってくれ、真剣に聞いてくれた。
話し終えて、一息つく。
「鷹栖は、自分が告白したのに相手に変わりがない事にモヤモヤしてるんだろう?」
「そう、ですね……」
「だったら一度押し倒してみたらどうだ?」
「…へ?」
「それで嫌がらなかったら、少なからず嫌われていない、という事だろう」
俺が、トキを押し倒す…?
そんな事考えもしなかった。と言うか、そんな事出来る筈がない。
そんな事をしてしまったら、今より関係が悪くなるに決まっている…。
俺は、苦笑して戸河内さんに答えた。
「そんな事しちゃったら、俺完璧に嫌われちゃいますよ」
「そうか? 婚約破棄なんかしてお前の所に来る様な子なんだろう?」
「そう、ですけど…」
なんだか居た堪れなくなって、俺は話題を変える事にした。
「そういう戸河内さんは、彼女とか居ないんですか?」
「居るように見えるか?」
「どうでしょう…? 戸河内さんって一人で生きて行けそうですよね」
「…そうでもないさ」
そんな事を話していると、酔っぱらった課長に絡まれてしまった。
それからは、呑まされ、歌わされ、まぁ散々だった。
居酒屋を出るころには、俺はそれなりに出来上がっていた。
「大丈夫か、鷹栖」
「はい…ちょっと、呑みすぎちゃいました…」
「家まで送ろう」
「え…大丈夫ですよ!」
課長や部長が送ってもらえ! と言いタクシー券を渡してきた。
これはもう断れない。
お願いします、と声を掛け、戸河内さんがタクシーを拾ってくれて車に乗り込んだ。
行先を告げ、車が発進する。
その、揺れが心地よくて、瞼が自然と閉じていった――。
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