10 / 14

第10話

【遙真side】 ゆっくりと瞼が開いた。見覚えのない部屋に一瞬戸惑う。 しかし隣に、汐音が寝扱けているのを確認してここは彼の部屋なのだと気付く。 確か、昨日はタクシーで戸河内さんと一緒に帰った筈だ。 それから記憶がないという事は俺は眠ってしまったのだろう。 ベッドから起き上がり、汐音の肩を揺さぶった。 「汐音。起きて」 「んん……あぁ、遙真目が覚めた? 気分はどう?」 「大丈夫だ。迷惑かけたな」 「いいっていいって」 欠伸を噛み殺しながら、汐音も起き上がる。 そういえば、と俺に心配そうな表情を見せた。 「昨日、柴さんが来てたんだけど、戸河内さんがちょっとからかっちゃったみたいで…」 「へ…?」 「色々、その、誤解してると思うから話しした方がいいと思うぞ」 「マジか…ありがとう」 急いで自分の部屋に戻り、スマホでトキに電話を掛けた。 この間番号を交換しておいてよかった。 何度目かのコール音の後に、トキの声が聞こえた。 それだけなのに、心臓が跳ね上がる。 『おはよう、どうした?』 「おはよう、トキ今こっち来てるんだろ? ちょっと会えないか?」 『いいのか?』 「何が?」 『……いや、家行くわ』 暫くして、トキが家に来た。上がってもらい、麦茶を出した。 「昨日はごめんな。俺、寝てたみたいで…汐音からトキの事聞いた」 「俺は別に大丈夫だけど…お前、何もされなかったか?」 「どういう事だ?」 「いや…お前とあの戸河内って上司、付き合ってるのか?」 トキが突拍子もない事を口にする。俺は驚いて開いた口が塞がらない。 「何でそうなるんだ? そんなわけないだろ!」 「嘘なんだな?」 「当たり前だろ! 俺が好きなのはっ!」 ハッとする。また、勢い余って好きだと言いそうになってしまった。 だめだ、だめだ。トキがまた困ってしまうじゃないか。 「何?」 「え…?」 「その続き」 「……何でもないよっ」 恥ずかしくて下を向く。 それを除き込むように、トキが俺の顔を見つめてくる。 心臓がうるさい。何で、そんな顔で俺を見るんだよ…。 「はる……」 「ト、キ…」 タイミングよくチャイムが鳴った。 俺たちはお互いの顔を離して、俺は急いで玄関へと向かう。 配達員が荷物を抱えて待っていた。 サインをして荷物を受け取る。宛名を確認すると親からだった。 荷物をキッチンのテーブルに置いて、トキの元へ戻る。 「親から荷物が来た」 「そうか」 なんだか気まずくて会話が続かない。 トキの顔が見られない。 どうしていいか解らない俺に、トキの方から話しかけてきた。 「お前が、誰とも付き合って無いんだったらいいんだ」 「それってどういう意味…」 「深い意味はないよ。じゃあ、俺帰るわ」 そう言って、トキは帰って行った。 深い意味はないって何だよ…。俺の気持ち、わかってるのに何なんだよ…。 トキが、解らないよ――…。

ともだちにシェアしよう!