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第13話

次の日も研修は続いた。 俺は、トキの家から研修会場へと向かう。 トキの熱も無事に下がったようで、俺は安心してトキの部屋を後にした。 部屋を出る直前、トキに話しかけられ今日は一緒に夕飯を食べる事となった。 その事が嬉しくて、つい顔が緩んでしまう。 「昨日何かあったのかー?」 なんて汐音に聞かれる程にはニヤついていたらしい。 俺は汐音に昨日の事を話し、そして礼を言った。 「お前が研修行けって言ってくれなかったら俺、またダメになってたかもしれない」 「俺をもっと崇めたまえよ、遙真君」 「ありがとう、感謝してます!」 そんな話をしていると、講師の先生がやって来た。 今日で最後の研修だ。残りも頑張ろう。 夕方、研修も無事に終わり、俺は汐音と一緒にトキとの待ち合わせ場所へと向かった。 あの後、トキに連絡を入れて汐音も一緒で良いか確認を取った。 有り難くも了解を貰い、今の流れとなっている。 汐音は、俺は邪魔じゃないかと心配していたが、お礼に俺が奢ると言ったら嬉々と着いて来た。 俺が東京に住んでいたころよく、トキと行った居酒屋での待ち合わせだった。 惜しくも、俺が仕事を辞めてしまった前日に行った居酒屋である。 複雑な気持ちで、暖簾を潜った。 トキはもう着いて居た様で、俺たちを見つけて手招きしてくれた。 そんな姿にさえ、ときめいてしまう自分は重傷だなと思う。 席に着き、軽く挨拶を交わす。 飲み物を注文して、改めてトキに言った。 「急にごめん、汐音の事…」 「いいよ、一緒に研修来てたんだろ、俺も芦田さんとちゃんと話してみたかったし」 「あ! 俺もですー!」 そんな話をしていると、注文したビール三つが出てきた。 俺たちはグラスを手に、乾杯する。 「正直聞きますけど、柴さんって遙真の事どう思ってるんですか?」 直球すぎる質問を汐音がトキにぶつけた。 俺は、むせそうになる。 確かに俺自身、それは気になっていた。しかし、聞けるはずもなく…。 今は汐音に唯々感謝するだけだった。 「そうですね…まぁ、元カノよりは大事に思ってましたね。 こいつが福岡行った時も俺知らされてなくて、それで心配になって仕事手につかないし、彼女の話は上の空だしで振られちゃいましたけど。こいつにはかっこつけて別れて来た、なんて言ったけど実際は俺の方が振られましたね」 そんな話は知らない。 ポカンとしていると、汐音がニヤニヤしながら脇腹を突いてくる。 「それってもう、遙真の事大好きだって言ってるようなもんじゃないですか柴さん」 「え…?」 「婚約者より、遙真の事が気になるんでしょう? それって、遙真が好きだからですよね?」 「好き…」 「お、おい、トキの事からかうのよせよ、汐音」 「そうですね、俺ははるが好きです、ただ、その好きが友情なのか…それとも、はると同じように恋愛感情なのか俺にはまだ解らなくて…」 そんな話をしていたら、料理が運ばれてきた。 俺は、自分の心臓が早くなるのを感じていた。 「解るように、付き合ってみたらどうです?」 「なッ何言ってるんだよ!? 汐音!!」 「だってそれが一番手っ取り早くないですか? 違ったら、その時は遙真が頑張って振り向かせればいいだけの話だろ?」 「それが難しいからこんな事になってるんだよ……」 「お試し期間という事で」 トキは何かしら考えている様で、黙り込んだ。 俺はただ、ハラハラするばかりだ。 汐音は隣で楽しそうだし…。 こいつ、連れてくるんじゃなかったそう思ったその時、トキ;が口を開いた。 「そう、だな…はるが嫌じゃなければお試し期間、作ってくれるか?」 「へ……?」 「そうすれば、俺の気持ちがどんなものか解るかもしれない」 「トキはそれでいいのか…?」 「お前が嫌じゃなければ」 「嫌なんてそんな事あるわけないじゃん!!」 むしろ、すごく嬉しい。 俺はお試し期間を設ける事にした。 そうして、俺たちは昔の話なんかしつつ、酒を飲み交わした。 新幹線の終電に乗り、俺と汐音は東京を後にする。 その車内で、俺はひたすら汐音に感謝を述べるのだった。

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