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意識 満月 アブノーマル

優しく包まれ、守られているような心地良さ。 だけど、誠さん…… 少し……震えてる……? 「……あの」 声を掛ければ、ハッとしたようにその手が解かれる。 離れていく……温もり。 空になった手をギュッと握り……意を決して口を開く。 「あ、あの、……ごめんなさい。 さっきの人は、高校時代の……友人で……」 元彼、とは言えなかった。 「さっき、偶々会って。ちょっと悪ふざけが過ぎて……あんな、事に……」 「………そうでしたか。 それなら僕は、随分と検討違いな事をしてしまいましたね」 誠の言葉に、伏せていた顔を上げる。 申し訳無さそうに下がった誠の眉尻。寂しそうな笑顔。 「僕には、成宮さんが……執拗に迫られて、困っている様に見えてしまって……」 「……」 迫られて── 確かに、そう見えるよね。 だから誠さんは、困っている僕を助けようと…… 「………はい、困ってました」 目を伏せ、小さく答える。 気のせいか……誠の表情が少し綻び、穏やかで優しい眼差しを向けられた様な気がした。 映画館へと向かう道すがら、他の店舗とは明らかに違う、異質な雰囲気を纏った専門店が目に飛び込んだ。 店の入り口上部に飾られているのは、満月をチョコレートにしたモチーフのTシャツ類。その下には、独特なポップでそれらを紹介した文が。 「入ってみますか?」 「……え、はい」 一歩中に足を踏み入れれば、見た事もないマニアックなアニメグッズが取り揃えられていた。入り口同様、独特なポップの紹介文まで。 息を整え、まだ動揺する胸を撫で下ろす。 壁際の雑誌コーナーへと向かう誠の後ろ姿を見送った後、更に奥へと進む。 開けた場所に特設された、シルバーアクセサリーコーナー。 高価なものは、鍵の掛かったガラスケースに入っているものの、手頃なものは手に取りやすい専用ホルダーに飾られている。 ……あ…… 見つけてしまった。 そのひとつひとつを目で追っていった先にあった──イルカのストラップ。 ……誠さんのと、同じ…… 光の中で揺れるイルカを思い出し、心が和んでいくのを感じる。 どうしよう……欲しい…… 小さなそれをフックから取り外し、手中に収めると、少し緊張したままレジへと向かった。

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