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嘘つき 雨傘 やきもち
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バイト先の喫茶店に、珍しく大輝が姿を現した。
整備員が着ていそうな、ライトグレーと赤の繋ぎ。後ろに束ねた、プラチナにライトピンクの混じった髪。目深に被ったキャップ。
その奇抜な格好に、他の客がチラチラと好奇な目を向けた。
カウンター中央に座るなり、片肘をついた大輝が僕をじっと見つめる。
昨日の事もあり、僕は頬を膨らませた。
「何しに来たの?」
「……んー。双葉のその怒った顔を見に」
悪びれる様子もなく、にっこりと笑顔を見せる。
「……で。久し振りに悠と会って、ヤっちゃったんだ」
「──えっ!?」
「嫉妬しちゃうなぁー。俺の愛人、双葉に寝取られて」
そう言って揶揄いながら首を少し傾け、表情を崩さず自身の首筋を指差す。
「……し、してないったら……!!」
かぁぁっ、と顔が熱くなり、絆創膏を貼ったそこを手で隠す。
それは一昨日……コインランドリーに行く前に、悠に付けられたもので。その夜、シャワーを浴びるまで全然気付かなくて……
「ほんとに? 嘘ついたら針千本飲ますよ?」
「……う、嘘なんて。………ぎゅってされて、……き、キス……だけ……」
下から、大輝の鋭い双眸に見据えられ……視線を逸らしながら、つい答えてしまう。
「はい、正直でよろしい。
……でもさ、双葉。第三者にとってはそんな事実、どうでもいいんだよ。
重要なのは、その痕があるかないか、だからね」
「……え」
「俺の言いたい事、解る?」
「……」
大輝の言葉に、心臓を貫かれる。
悠に付けられたこの痕が、急に罪深いもののように感じた。
いつしか外は雨が降り出し、雨傘を広げる人の往来が目立ち始める。
注文を受けたクラブサンドを作っていると、入口のドアが開き呼び鈴が鳴った。
視線を向ければ、そこにはスーツ姿の誠の姿が──
瞬間、僕が緊張したのを察したのか。大輝が振り返ってドアの方を見る。
「……お、渡瀬じゃん」
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