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駐車場 看板 絵葉書

「……」 絡まる視線。 僕を捕らえる、真っ直ぐな双眸。 ……変わっていく、空気。 形の良い唇が、その距離を詰め…… 間近に迫り……僕の心が、切ない程に震えて…… ──あ…… 誠の瞳が薄く閉じられ、つられて僕も閉じる。 零れた涙が頬に伝い、包み込む誠の指に触れて、滲む。 目尻、頬……そして、唇。 一度離れてから、今度はもう少し深く落とされる……柔らかな熱。 ……誠さ、ん…… 胸の奥が、軽くなっていく。 苦しくて、苦しくて……息も出来ない程、辛かったのに…… 「……」 名残惜しそうに、誠の唇が離れてゆく。 瞼をゆっくりと持ち上げれば、優しい色を孕んだ瞳が、僕を優しく包み込む。 「──好きです、双葉さん」 「………」 それは、ずっと欲しかった言葉で。 嬉しいのに。……それには、答えられない…… 「……僕も、です」 「……」 「でも、僕には──」 「解っています。……無理、しないで下さい。思いを告げられただけで、充分ですから」 「……」 「どうか彼女と、末永くお幸せに」 寂しそうな瞳。 それを誤魔化すかのように数回瞬きをし、笑顔を作って心を隠す。 「──!」 違う…… 勘違いしてる…… ……僕は、誠さんの事…… 気付いたら、引き止めていた。 僕から離れた手を。腰を上げようとした、誠を。 懸命に腕を伸ばし、誠の懐に飛び込む。 「──待ってください! ……待って、誠さん。 ちゃんと話します。 話すので、……もう、離れたり……嫌いになったり、しないでください……!」 カフェを出る。 煉瓦調の外壁。ポストカードになりそうな、お洒落な店構え。狭い駐車場には、クラシックカー。 もし、脇道の入り口に立て看板が無かったとしたら、多分、寄る事は無かったし、結ばれる事もなかった。 運命に、導かれたとしか……思えない。 ……ごめんね、悠。 悠の籠から飛び出して…… 誠さんという、大空に羽ばたいてしまって──

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