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歩道橋 執着 百合 1

光り輝く白百合の蕾。 心無しか、クリニックに訪れた時よりも開いているような気がした。 会計を終え、外に出る。 院内の清潔な空気とは違い、排気ガスに塗れた街の空気。文明の恩恵を受けながらも、こんな薄汚れた空気を吸って生きていかなければならないのかと思うと……何だかいたたまれない。 駅に向かう途中、大きな歩道橋を渡っていると商業施設が見えた。その建物にある、大きな液晶スクリーン。プロモーション映像が流れた後、画面いっぱいに、デジタル時計が表示される。 その瞬間、ハッと我に返った。 「……悠、ごめん。もうすぐバイトの時間だから……」 「そこ、俺も行くわ」 「……え」 悠ののんびりとした返しに、驚く。 「バイトしてる双葉の姿、大輝が知ってて俺が知らないのは、何か不公平で癪に障るしな」 「……えぇっ、そういう理由……?!」 「そういう理由だよ」 慌てる僕の反応が面白いのか。悠がやけにニヤニヤする。 「……別に来たって、何にも面白くないよ」 「んだよ。大輝には見せられて、俺には見せたくねーのかよ」 「そうじゃないけど。……もぅ、遅刻しちゃう……!」 らちの明かない問答を繰り返す暇はなく。悠を連れて駅まで走った。 カウンターに座る悠に、アイスコーヒーを出す。 急がせたせいで、暑いらしい。 パーカーのショルダー部を肩から外し、襟元を空気に曝す。深めに被ったキャップはそのまま。片手でグラスの上部を持ち、ストローを器用に避けながらごくごくと飲む。 「可愛い。良く似合ってんじゃん」 「……ありがと。……でも、可愛くは、……ないと思う」 キャップのツバから覗く、真っ直ぐな悠の双眸が僕を捕らえる。 白いシャツに黒のキャスケット帽とカフェエプロン。胸にはネームプレートを付けただけの、とてもシンプルな格好。 「他にいねーの、店員」 「うん。最初は先輩と二人でやってたんだけど……今は一人だよ」 「そっか。大変だな」 「ううん、そうでもないよ。……ここは、常連さんで成り立ってるような店だし。混み合う時間さえ過ぎれば、後はマイペースに仕事できるから……」

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