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歩道橋 執着 百合 2

ここを紹介してくれたのは、大輝だった。 結婚式の招待状が届いてから──仕事が手につかなくなり、ミスを繰り返し、挙げ句、頻繁に起こる発作のせいで、会社に居辛くなった僕は……自主退職を余儀なくされた。 絶望から未遂をした後も、引き籠もってばかりの僕を外に連れ出し、ここなら社会復帰し易いだろうからって。 後で知った事だけど。僕が働き易いように、予めオーナーに話をつけてくれてたみたいで── ゆったりと流れる時間。落ち着いた雰囲気。 僕の心をゆっくりと癒してくれるこの空間は、心地良くて。 ……今の僕に、合っていると思う。 「……双葉」 「ん?」 「ありがとな。……俺、ちゃんと働いて、双葉を支えられる男になるから」 「………え」 悠の台詞に驚き、僕は返す言葉が見つからない。 だけど、誤解させたままズルズルと引き伸ばす訳にもいかなくて。 ……近いうちに、誠さんの事を話さなくちゃ…… 「じゃあ、先帰るから……鍵貸して」 空になったグラスをコースターに戻し、悠が片手を出す。 「……え」 「外で待つの、もう勘弁」 『離婚届を手紙と一緒に置いてきたんだ』──そうだ。悠は今、家出状態だったんだ。 ていう事は、この先も……ずっと僕のアパートに……? 「あ、悪ぃ!」 腰を少し浮かせ、鳴り響く携帯を取り出した悠が、僕に掲げて見せる。 画面を確認し、携帯を耳に当てながら出入りへと向かって行く。 ──カランッ その時、ドアが開いた。 入って来たのは、スーツ姿の誠。 彼の姿を捉えた瞬間──緊張感が走り、胸の奥が柔らかく締め付けられる。 デートの帰りに寄った喫茶店での、突然の告白。僕を介抱してくれた、優しくて大きな手。舞い降り重なった、熱くて柔らかい唇。 ……それらが蘇り、僕に甘い痛みを与えた。 店内に入る誠と悠が、すれ違う。 いつもの席に向かう誠と目が合えば、恥ずかしくて…… はにかみながら、誠の元へと向かう。 ……だけど、僕は気付かなかった。 店の外で電話をしている悠が、ガラス越しに此方の様子を覗っていた事に。

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