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もどかしい 指先 弄ぶ 3

「悠が小学生になった頃、同じクラスの大輝と友達に。──でもそれが、また運命の歯車を変えてしまったのよ。 悠を理由に、義父が大輝のママと頻繁に会うようになって。勘付いた私の母は、そのキッカケを作った悠を随分と恨んで── ……きっと、悠を庇う私が目障りだったんでしょうね。親権を実父に移し、私を鳴川家から追い出したの」 「……」 「あの家に、一人残された悠が心配で。大輝を介して、ずっと手紙のやりとりをしてた。 悠が高校生になった頃かな。恋人が出来たって私に教えてくれて。……嬉しかった」 伏し目がちになった響子が、そういいながら口の両端を綺麗に上げる。 「……でも、義父や母(あの人達)は違った。 悠に大切な人が出来たと知って、それを壊そうとしたの。勝手に決めた相手との縁談を進めて、『卒業したら、直ぐに身を固めろ』って」 「……」 「つまり……自分達がなし得なかった幸せを、我が子に易々と掴み取られるのが許せなかったのよ」 ──そんな。 そんなの、勝手すぎる。 酷すぎるよ…… 「それに。……自分の人生を犠牲にしてまで産んだ子が、不出来な同性愛者だったと知って。義父も母も、相当なショックを受けてたわ」 「……」 「だから悠を、隔離病棟に無理矢理入院させて、更生させようとしたの」 「……そん、な……」 それだけの理由で。 悠を、そんな酷い目に合わせるなんて…… 「……」 ふと脳裏に、兄の和也(かずなり)が浮かぶ。 ……和兄も、僕が男性と付き合っている事に、ショックを受けてた。 でも、色んな葛藤を抱えながらも、受け入れようとしてくれた。……僕の事を思って。 説得してくれたのは、悠。 僕の知らない所で。和兄と。 それから……戦うって言ってた。 僕との未来の為に、お父さんを説得するって。 僕はずっと、守られてたんだ。 色んな風当たりから、盾になってくれた──悠に。 全然、知らなかった。 解ってなかった。 こんなにも深く……悠に、愛されていたなんて……

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