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第2話

「……」 目をそっと開ける 見れば誠は席を立ち、こちらに背を向けていた ……え、何で…? 言葉が出ずにいると 誠は僕を残したまま廊下に出ていってしまう 脳内から一気に熱が引き、代わりに淋しさと不安が押し寄せる …誠さん…… ……どうして…… ぎゅ、と胸が締め付けられる 目に涙が溜まり、俯くと零れてしまいそう 「………」 唇にそっと触れる そして、心を慰めるかの様に 先程の感触を必死に追い掛けた 翌日の午後三時半頃…… バイト先の喫茶店内は静寂を取り戻し、僕一人だけとなった 僕は深い溜め息をつく そして、カウンター裏に溜まった洗い物を片付けていると チャイムと共にドアが開いた 「いらっしゃいませ」 見れば、スーツ姿の誠であった 視線が合うと、誠は目を細め優しそうな笑い皺を僕に見せる 「こんにちは」 僕に声を掛け、誠はいつものテーブルへと向かった 僕は洗い物の手を止め、誠の傍へ急ぐ 「…今日は、アイスの方がいいですか?」 「うん、お願いします」 外回りの合間なのだろう……大きな鞄を隣の椅子に置くと、誠はハンカチを取り出し汗で湿った首筋を拭った 汗臭さなどは一切感じない 寧ろ爽やかで、清潔感さえ感じる 「………」 ……それに、胸の奥がきゅん、とする様な匂い…… 誠さんに逢えて、嬉しいな…… 口元を綻ばせると、そんな僕に誠は微笑んでくれる 傍らを離れたくない気持ちを抑え踵を返す と、誠の長い指が僕の指先にそっと触れた 「……!」 それだけで、胸の奥が柔らかく締め付けられる 振り返って見れば、誠がこちらをしっとりとした瞳で見つめる 大きくて優しい瞳…… その黒目に吸い込まれるように見つめ返すと、誠の指が僕の指を優しく絡ませる 「…逢いたかったです」 そう囁かれ、僕の鼓動が早くなる 「ま、誠さ……」 顔が熱くなり、誠から少し視線を逸らした その時だった…… ……コンコン ガラスの壁を叩く音が聞こえた

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