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第6話
携帯が震える
慌てて画面を確認し、誠さん、という文字に顔がにやけてしまう
「…はい」
「着きました
……今何処にいますか?」
待ち焦がれた分、嬉しくて声が震える……
逢えたらきっと、もっと……
「誠さん…」
スーツ姿の誠を見つけ、軽く手を上げる
誠も僕に気付き、笑顔でこちらに向かってきた
「あ、…逢いたかった、です」
誠の傍に立つと、僕は誠を見上げた
そして顔が熱くなるのを感じながら、おずおずと手を伸ばす
その手は、誠の袖口を掴んだ
「……双葉」
驚いた様に目を見開き、何度か瞬きをした誠は、直ぐに口端を上げ綺麗に笑う
と同時に僕から視線を逸らした
「……」
その様子を見た僕は、俯いて手を離す
すると誠の手が、僕のその手を追いかけるようにして握る
「行きましょうか」
「……はい」
人が大勢いる中
男同士で手を繋ぐ……
初めて手を握ったのは
悠から僕を連れ去った時
その次は、ホラー映画を一緒に観て、僕が怖がった時
誠さんはいつだって優しくて
気付けば僕の傍にいてくれた……
握る手に少し力を込める
と、誠もそれに答える様に優しく握り返す
見上げて誠を見ると
誠も僕を優しく見下ろした
その時だった
「あれ、渡瀬さん!」
突然背後から男声が聞こえ、驚いて振り返る
「偶然ですね!」
見るとそこに、満面の笑みを浮かべる九条が立っていた
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