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第9話

その夜、誠から連絡が来る事は無かった 誠と九条があの後どうなったのか… 気になって夜もまともに眠れなかった…… それから一週間 会うどころか連絡さえない その間、何度か電話をかけてはみたものの、コールばかりが虚しく耳に響くだけだった 「………」 繋がらない電話を手にしたまま、不安を隠す様にイルカのストラップにそっと触れる 会いたい… ふとその思いが過る 時計を見れば 時刻は22時前…… こんな遅い時間に行くのは 迷惑かも……… 急に弱気になり 心が萎んでゆく でも、ずっとこのままというのは堪えられそうにない 「……」 やっぱり、行ってみよう… 携帯電話を持ち 玄関を出ると 誠のマンションへと向かった 柔らかな光、高級感が漂うエントランス 庶民的なアパートに住む僕からしたら、気後れしてしまいそうな程立派なマンション 部屋番号を押してチャイムを鳴らそうとすると ふと視野に何かが動いたのが見えた そちらへふと見れば ガラス越しにあるエレベーターから、誰かが降りてきた所だった 「……!」 その人物は、忘れもしない… スーツを着た九条だった

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