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第20話
中々戻らない誠に、僕は不安を感じながらドアを開けた
風が無く、じめじめと嫌な湿気が肌に纏わりつく
じっとりと汗ばみ、肌が濡れる
「……誠…さ…」
恐る恐る誠を呼ぶと、道の端にしゃがんだ人影が見えた
瞬間、背筋に冷や汗が滲む
その人影がゆっくり立ち上がり、こちらに向かってきた
「…双葉、おいで」
声と共に、暗闇にぼんやりと顔が見える
それが誠だと解ると、ホッと胸を撫で下ろした
差し出された手に、僕の手を重ねる
リードされ、先程誠がいた場所に辿り着く
生い茂る雑草の先に水辺があり
そこに青白い小さな光がふたつ、寄り添うようにふわりと飛んだ
「…わぁ、ホタルだ」
しゃがんでその光を見つめる
僕の鼓動よりもゆっくりと、光っては消える
その光がひとつ上がり、僕の隣にしゃがむ誠に近づいた
「良かった、見られて……」
蛍の光が強くなり、誠の笑顔が浮かび上がる
「……え」
その光がゆらり、と僕の顔の前を通る
再び繋がれた手
その手のひらが、熱く湿る
「蛍も、双葉の笑顔も」
「………」
その言葉に、顔が熱くなり誠から視線を逸らした
僕と誠の間に、もうひとつの光がふわりと飛ぶ
そして先程の光に寄り添うように、水辺へと戻っていった
「…僕達みたいですね」
「……え」
誠はふたつの光を目を細め眺める
と、
新たな光が別の場所から舞い上がり、先程の光にふわりと近寄る
そしてふたつの光にぶつかりそうになり、片方のの光が離れていってしまった
それはまるで九条と僕の様で
三人の構図と行く末を示している様だった
「……」
僕はきゅっと口を引き結んだ
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