22 / 92

第22話

帰りの車内は、行きと同じく会話はなかった ラジオの音もなく、静かな空間に不穏な空気が漂う 「…双葉」 その沈黙を破ったのは、誠だった まだ外灯しかない寂しい道の路肩に車を停めると、誠はこちらを向いた 「……寂しい思いをさせてしまって、すみません… どんな言葉も、カッコ悪い言い訳にしかなりませんが…… 後輩を優先して双葉を家に帰してしまった時も、仕事が立て込んで直ぐに連絡できなかった時も ……心の何処かで、双葉ならきっと解ってくれると、勝手に思い込んでしまっていました……」 「………」 「落ち着いたら……なんて…… …少しでも時間を見つけて、電話の一本でもするべきでした」 「………」 「双葉に、…双葉の優しさに、甘えてしまっていました……」 「……」 込み上げる涙を抑える事は出来ず、後から後から溢れてくる 誠の手が伸び、その涙を長い指で掬われる 「……僕に至らない所があったら、教えて下さい」 「………」 視線を上げれば、真剣な目をした誠の顔があった 感覚の無くなった指先に誠の手が触れ、ギュッと握られる 「……優しく、しないで」 誠の指から逃れる 僕の言動に、柔らかになりつつあった空気が …少なくとも僕を纏う空気が、一瞬で変わった 「…誠さんを、……何処まで信じたら……でも…」 言いながら目を伏せる 「信じなかった僕も……」 「双葉」 誠の大きな手が、指先の感覚を失った僕の手を包んだ 「ゆっくりでいいので 支離滅裂でもいいから………双葉の思ってる事、全て話して下さい」 それでも僕に優しくする誠に 潤んだ瞳を向けた

ともだちにシェアしよう!