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第23話
「……きっと、僕の事…軽蔑します…」
「しません」
僅かな光が誠の顔の一角を照らし、瞳が輝く
再びその瞳から逃れ、肩で息をした
「……誠さんのマンションに、行きました…」
『誠なら、今シャワー浴びてると思うよ』
『正直あなたより僕の方が、誠に相応しいと思うんだけど……』
もう何度も、僕の頭の中の九条が意地悪く僕に言う
「…玄関先で、九条さんに会って……その…」
そこまで言って、喉が詰まったように苦しくなる
「…は、話を、聞いて……
誠さんの心は
……九条さんに行ってしまったんだ……って…」
そこまで言うと、細く長く息を吐く
声も手も、寒くないのに……さっきから震えが止まらない
「……何の話ですか?」
誠の表情が変わる
「九条に何を言われたんですか?」
僕の手を包んだ誠の手に力が込められる
「………」
誠は数回瞬きをし、口を閉ざした僕から顔を逸らすと小さく溜め息をついた
「……僕は、双葉から離れたりしません
まして、九条に気移りするなど……」
「………」
「何を言われたかは解りませんが、僕と九条の間には何もありませんから……」
真剣な瞳から、嘘をついてるなんて思えない
…だけど、九条から漂った石鹸の匂いを思い出す
「…信じたいです…信じ、たかった……です
今も、まだ混乱してます……」
眉尻を下げ、誠から視線を外す
「……何もないのに、どうして九条さんから
…誠さんと同じ……石鹸の匂い……」
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